「そろそろ離乳食、始めなきゃかな?」——SNSや育児本を見るたびに、そんなプレッシャーを感じたことのある方も多いかもしれません。日本では生後5〜6ヶ月から離乳食を始めるのが一般的とされていますが、「え、もうそんなに早く?」「本当に今からあげていいの?」と疑問を抱く保護者も増えています。実際に、海外の一部では生後6ヶ月以降を推奨する国も多く、日本の“早すぎる”離乳食開始が話題になることも。今回は、離乳食の開始時期について、日本の現状と世界の違いを比較しながら、なぜそうなっているのかを掘り下げていきます。
■離乳食が早すぎると言われる日本の実態とその背景
●生後5ヶ月から始めるのが日本の“当たり前”?
日本では一般的に、生後5〜6ヶ月で離乳食をスタートするのが“常識”のようになっています。母子健康手帳にもその時期を目安として記載されており、乳児健診などでも医師や保健師から「そろそろ始めましょう」と言われることが多いのが現状です。
一方で、SNSやネット上では「まだミルクや母乳で十分では?」「胃腸が未発達なうちに固形物なんて大丈夫?」という声も少なくありません。この「早すぎるのでは?」という疑問は、近年ますます増えてきています。
●世界の離乳食事情はどう違う?
実は、世界の育児ガイドラインでは離乳食の開始を「生後6ヶ月以降」と明記している国が多数あります。たとえば:
- WHO(世界保健機関):生後6ヶ月までは母乳またはミルクのみで栄養をとることを推奨
- アメリカ小児科学会(AAP):生後6ヶ月を目安に離乳食を開始
- イギリス NHS(国民保健サービス):基本的に生後6ヶ月までは完全母乳(またはミルク)を勧める
これに対し、日本は「生後5〜6ヶ月ごろ」という少し早めの時期から始めることが前提になっているため、国際的に見ると“早すぎる”という印象を受けるケースがあるのです。
●なぜ日本は早めの離乳を推奨しているのか?
その背景には、いくつかの要因が考えられます。
① 栄養の補完という視点
母乳やミルクでは鉄分や亜鉛など一部の栄養が不足しがちになると考えられており、離乳食での補完が重視されています。
② 発達段階の個人差を尊重
あくまで「目安」として5〜6ヶ月とされており、無理に始める必要はないという柔軟性もある。
③ 文化的な慣習
日本ではおかゆやすりつぶし野菜など、「赤ちゃん用のやさしい食」が古くから根付いており、早い段階での食習慣に移行することが育児文化に浸透しています。
■早すぎる離乳が赤ちゃんに与えるリスクとは?
●胃腸の未発達による消化不良
赤ちゃんの消化器官は生後6ヶ月ごろまでは未熟な状態が続きます。あまりに早い段階で離乳食を始めると、食材の成分をきちんと分解・吸収できず、下痢や便秘、嘔吐などを起こすケースもあります。
●アレルギーリスクとの関係
過去には「早く与えるとアレルギーになりやすい」と言われていた時期もありましたが、最近の研究では「特定の食材を極端に遅らせても逆にリスクが上がる」ことも示されています。ただしこれはあくまで消化が可能な時期に限るため、まだ準備が整っていない赤ちゃんに早期から多くの種類の食材を与えるのはリスクです。
●母乳・ミルクの摂取量が減ることで栄養バランスが崩れる
離乳食を早く始めすぎてしまうと、母乳やミルクの摂取量が自然と減少してしまい、結果的に必要な栄養素が不足することも。とくに鉄分やカルシウムなどは、母乳・ミルクを中心に補われるため、適切なバランスが重要です。
■離乳食の開始タイミング、判断のポイントは?
●月齢だけでなく「発達のサイン」に注目
離乳食の開始時期は月齢だけでは決められません。実際のところ、以下のような“準備OKサイン”を見て判断するのがより確実です。
- 首がすわり、支えがあれば座れる
- よだれの量が増えてきた
- 食べ物に興味を示す(口を動かす、じっと見る)
- スプーンを入れても舌で押し出さない
これらがそろってからスタートすれば、赤ちゃんにとっても無理がなく、楽しい“食の第一歩”になります。
●医師や保健師との相談も大切
個人差が大きいため、不安な場合は自治体の保健師や小児科医に相談するのが安心です。「うちは6ヶ月過ぎてから始めたいんだけど…」という希望があっても、問題はありません。
■焦らず、赤ちゃんのペースで進めよう
●周囲と比べなくてOK
「SNSで○ヶ月から始めたって言ってた」「保育園の準備のために早めに…」といった外的要因で焦る必要はまったくありません。離乳食は赤ちゃんの成長に合わせて進めるべきで、月齢が遅れても早くても“良い・悪い”の評価は存在しません。
●“食べることを好きになる”ためのステップ
早すぎる離乳食開始で苦手意識がついてしまうと、その後の食習慣にも影響を与える可能性があります。大切なのは、赤ちゃんが「楽しい」「美味しい」と感じながら、徐々に食べることに慣れていくこと。そのためにも、適切なタイミングを見極めることが何より重要です。
■まとめ|日本の離乳食が早すぎると言われる理由を見極めよう
日本では「5〜6ヶ月で始める」が一般的になっているものの、世界的には生後6ヶ月以降がスタンダード。その差を知ることで、自分の育児に対する視野も広がります。何より大切なのは、「赤ちゃん一人ひとりの発達と個性」に合わせた対応です。
「うちはもう少し後に始めたい」と感じたら、それも立派な選択。大切なのは、誰かと比べず、焦らず、赤ちゃんと向き合いながらペースを作っていくことです。離乳食はゴールではなく、これから始まる“食育”のスタートライン。無理のない一歩から始めていきましょう。
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