原発性胆汁性胆管炎(PBC)についてまとめ

原発性胆汁性胆管炎(PBC)とはどのような病気ですか?

PBCとは肝臓からつながっている胆管が炎症を起こし、徐々に破壊される慢性の自己免疫性疾患です。

胆管とは

肝臓で作られた胆汁を胆のうや十二指腸へ運ぶ管の総称です。胆管には以下のような種類があります。

肝内胆管:肝臓内に存在する胆管で、肝細胞で生成された胆汁を集めます。

肝外胆管:肝臓の外に存在し、肝臓から出た胆汁を胆嚢や十二指腸へと運びます。この中には、

  • 肝管(左右の肝管が合流して形成)
  • 胆嚢管(胆嚢からの胆汁を運ぶ)
  • 総胆管(肝管と胆嚢管が合流して形成し、小腸に胆汁を運ぶ)

が含まれます。

画像引用元:https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0020/G0000183/0002
画像引用元:https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/14/091100023/090300092/
自己免疫疾患とは

免疫系が誤って自身の体の組織や細胞を異物と認識して攻撃する状態を指します。通常、免疫系は体を病原体や異物から守るために働きますが、自己免疫疾患ではこのシステムが誤作動し、自身の正常組織に対して免疫反応を起こしてしまいます。これにより、様々な炎症や組織の損傷が引き起こされ、多様な自己免疫疾患が生じます。

代表的な自己免疫疾患

・関節リウマチ
・全身性エリテマトーデス
・多発性硬化症
・1型糖尿病
・炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)
・甲状腺疾患(橋本病、グレーブス病、バセドウ病)
・ハッシムト脳炎
・原発性胆汁性胆管炎
・ギラン・バレー症候群
・重症筋無力症
・乾癬
・強皮症
・シェーグレン症候群
・筋炎(例:皮膚筋炎、多発性筋炎)
・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)

免疫系とは

病原体(細菌、ウイルスなど)やがん細胞などから体を守る体の防御システムのことで、主な働きは大きく以下の3つです。

  1. 病原体の検出と排除
  2. 異物や変異細胞の識別と攻撃
  3. 炎症反応の調整

さらに免疫系は固有免疫と適応免疫に分けられます。

1.固有免疫(先天性免疫)
・体が生まれながらに持っている防御機能
・病原体を迅速に認識し、すぐに反応します。
・白血球の一種であるマクロファージや好中球が関与します。
・皮膚や粘膜などの物理的障壁も固有免疫の一部です。

2.適応免疫(獲得免疫)
・特定の病原体に対する特異的な反応を提供します。
・リンパ球(B細胞とT細胞)が主要な役割を果たします。
・B細胞は抗体を産生し、T細胞は感染細胞を直接攻撃したり、他の免疫細胞を活性化することで反応します。
・一度感染した病原体に対して記憶を持ち、再感染時にはより迅速かつ効果的に反応します。

免疫反応能が低下すると感染症などで重篤な状態に陥る一方、過剰に反応すると自己免疫疾患を発症することもあります。

主にPBCは中年の女性に多く見られ、胆管が破壊されているために肝臓内で作られた胆汁が胆のうへ適切に流れなくなることで肝臓にダメージを与え、最終的に肝硬変や肝不全を引き起こします。

胆のう

肝臓でつくられた胆汁を濃縮して貯蔵し、食事の消化の際に必要に応じて小腸に送り込まれます。

胆汁

脂肪の消化吸収と体内からの排泄物処理の2大役割を担っており、この機能が障害されると脂肪や胆汁の吸収不全や代謝異常をきたします。

1.脂肪の消化と吸収の促進:胆汁酸は脂肪を微細な粒子に乳化し、脂肪酸とグリセロールへの分解を容易にします。これにより、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)や他の脂肪性栄養素の吸収が効率的に行われます。

2.廃棄物の排出:胆汁は肝臓が処理した廃棄物(ビリルビンなど)や余分なコレステロールを体外に排出する手段としても機能します。

胆汁は主に肝臓の肝細胞によって作られます。

より詳しく説明すると、
1.肝細胞内でコレステロールなどから胆汁酸が合成される
2.血液から肝細胞内に取り込まれた毒素や老廃物などが、胆汁酸と結合する
3.これらが肝細胞内の「胆汁細管」と呼ばれる管の中に分泌され、胆汁となる

つまり肝細胞内での胆汁酸の合成と、排泄対象物質の胆汁酸への結合が胆汁生成の基本的なメカニズムです。

こうしてできた胆汁は、肝内胆管→右肝管・左肝管→共通肝管→胆嚢→胆嚢管→十二指腸へと運ばれて体外に排出されます。

なぜ胆管が破壊されるの?

抗ミトコンドリア抗体(AMA[anti-mitochondrial antibody])という輩が、肝臓の細胞(特に胆管細胞のミトコンドリア)を敵とみなして自己免疫反応を起こして細胞を壊していくようです。

この自己免疫の反応が胆管の炎症や破壊を引き起こし、最終的には肝臓の機能障害につながると考えられています。

特に胆管細胞のミトコンドリアに対して、執拗に攻撃を仕掛けるため胆管が破壊されてしまうのです。

ちなみにPBC患者の95%以上で、抗ミトコンドリア抗体(AMA)が陽性というデータがあります。

ミトコンドリアとは

抗ミトコンドリア抗体(AMA)を除去すればPBCが治る?

理論的には抗ミトコンドリア抗体(AMA)を完全に除去できれば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)は治る可能性があるのではと思っています。

しかし実際には、現時点でAMAを完全に除去できる治療法は確立されていません。

AMAの除去を試みる治療として、免疫抑制薬や血漿交換療法が臨床研究で試みられています。

これらの治療によって一時的にAMAが減少することが確認されています。

しかし、AMAが再度上昇してしまう「リバウンド」が起こりやすく、AMAの持続的な抑制・除去には至っていません。

また、こうした治療によってPBC自体の進行を抑えられるかどうかも不明です。

したがって現時点では、完治を期待できるほどAMAを完全コントロールできる治療法は確立されておらず、課題が多いのが実情です。

今後の研究次第で可能性があると期待されています。

PBCを治す方法はないの?

現在のところ完全に治す方法はありませんが、病気の進行を遅らせる治療法は存在します。

一般的な治療には、ウルソデオキシコール酸(UDCA)という薬が使用され、これによって多くの患者の症状の改善や肝機能の安定化が見られます。

UDCAは胆汁酸の一種で、元々体内に少量含まれている天然型の胆汁酸です。

胆汁酸の排泄を改善し、肝細胞の保護、炎症の軽減を促します。

これにより、肝臓へのダメージを減らし、症状の改善や病気の進行を遅らせることができます。

UDCAには、

  • 肝細胞の胆汁酸代謝・輸送系を正常化させる
  • 肝臓への炎症性サイトカインの作用を抑える
  • 免疫調整作用がある

などの効果が知られていて、肝疾患の治療薬として用いられます。

特に原発性胆汁性胆管炎(PBC)に対しては、世界的に最も有効性が高い薬剤として第一選択薬に位置づけられています。

UDCAは長期間にわたって服用することが多く、その効果は継続的な服用によって発揮されます。

まとめ

ウルソを服用しながら、まずはAMAを除去する。自己免疫性疾患を治すにはどうするか。AMAになった原因を突き止める。

胆汁に含まれる成分が血液中に逆流するため全身の強いかゆみが起こります。

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