「青い海の塩はマイクロプラスチックが心配。」そんな不安を感じた人向けに、国内外の研究とメーカーの公表情報をもとに、実態と見分け方、毎日の対策まで一気に整理します。
結論からいえば、日本の市販食塩に含まれるマイクロプラスチックは国際比較で概ね低水準で、食塩由来の暴露は他経路に比べて小さいという結果が出ています。
ただし、検査のやり方や検出サイズの違いで数値は動くため、数字の読み方と選び方のコツをセットで理解することが大切です。
青い海の塩とマイクロプラスチックの不安を科学で解く
最初に全体像を押さえます。
海塩からマイクロプラスチックが見つかったというニュースは世界各地で報告されています。
一方で、日本の市販食塩を広域に調べた報告では平均1.3個/kgと低い値で、食塩からの年間摂取量は平均4.7個と推定されています。
また、国際共同研究では「ブランドによって0〜10個/kg」といった幅が示され、塩の種類や採水環境、分析手法で差が出ることが分かります。
こうした知見を前提に、「青い海の塩」を選ぶ際のポイントやメーカーの取り組みを具体的に見ていきます。
懸念の背景
海に流出したプラスチックが微小化したものがマイクロプラスチックで、海産物や海水に起源を持つ製品に混入する可能性があります。
日本の市販食塩を地域横断で分析した研究では、検出されたマイクロプラスチックは合計6個/4.8kgで、平均1.3個/kgと算出されました。
この研究は、食塩由来の年間摂取量が平均4.7個と極めて小さく、呼吸や室内ダスト、魚介類由来と比べても桁違いに少ないことを示しています。
一方、国際研究では「あるブランドでは不検出、別のブランドでは最大10個/kg」という幅があり、世界的には存在自体は珍しくないことも確認されています。
つまり、「ゼロかどうか」よりも「どのくらいの大きさまで、どんな方法で数えたか」を理解することが重要です。
検出の実態
研究で報告された主な数値を比べると、国や手法の違いが数値に直結していることが分かります。
以下の表は、国内の広域調査、国際的なブランド横断調査、日本の3産地を対象にした詳細分析の要点を横並びにしたものです。
| 対象 | 結果の要点 | 主な検出数値 | 主な方法 |
|---|---|---|---|
| 日本の市販食塩（広域） | 平均は世界と比べ概ね低水準 | 平均1.3個/kg、年間摂取推定4.7個 | ろ過＋FT-IR |
| 国際ブランド横断 | ブランド間の幅が大きい | 0〜10個/kg、最大でも年37個摂取程度 | 149μm以上をラマンで同定 |
| 日本の3産地詳細 | PP・PEなどを全サンプルで確認 | 粒径29〜459μm（≥20μmを評価） | 顕微FT-IR |
同じ「個/kg」でも、粒径の下限や識別技術が異なると結果が変わる点に注意が必要です。
安全性を評価する際は、数値そのものよりも、方法と検出サイズ、摂取経路の相対比較を踏まえて判断しましょう。
選ぶ視点
店頭や商品ページで確認できる情報だけでも、実は安全性の手がかりは増やせます。
以下のチェックポイントを押さえて選ぶと、納得感のある買い物につながります。
- 原材料が「海水」のみか、採水地点や製法の説明が明確か。
- 品質マネジメントの認証（例：ISO 22000）の有無や運用の記載があるか。
- 第三者機関による分析や、検査頻度・検出限界の開示があるか。
- パッケージや公式サイトでロットや製造所が追跡できるか。
- 保存・流通の管理体制（密封・湿気対策など）が明記されているか。
上記は絶対条件ではありませんが、複数が満たされているほど信頼性の裏付けになります。
企業の取り組み
「青い海」を展開する株式会社青い海は、食品安全マネジメントシステムISO22000の認証を取得し、品質保証部門の常設や工程管理を公表しています。
また、生活クラブが2019年に依頼した外部機関の検査では、同社の塩について「マイクロプラスチック不検出（検出限界1ppm）」との結果が公表されています。
ただし、検出限界や分析法が異なると結果は変わり得るため、最新ロットの検査や手法の詳細が公開されているかを合わせて確認するのが実務的です。
メーカーの取り組み情報は安全性評価の重要な材料であり、選択時の安心感に直結します。
家庭での使い方
食塩は摂取経路全体の中では微小な寄与にとどまるという報告があるため、過度な不安で塩を避けるより、適量使用と総摂取量の管理が現実的です。
むしろ室内ダストや呼吸、魚介類からの取り込みの方が桁違いに多いと推定されているため、塩選びと併せて生活全体での対策を組み合わせるのが効率的です。
使い分けとしては、料理の種類に応じて少量で味が決まる塩を選ぶ、スパイスや酸味を活かして塩量を抑えるなど、摂取総量をコントロールする工夫が効果的です。
検査方法と数字の読み方をシンプルに理解
報道の「○○個/kg」という数字は、検査方法の条件で大きく変わります。
ここでは、代表的な手法と検出サイズの違いを俯瞰し、数字の読み方を整理します。
分析手法
「どんな粒を、どの方法で、どこまで識別したか」で結果は左右されます。
国際研究の多くは、濃縮・ろ過で粒子を回収した後、ラマン分光などで高精度に樹脂種を特定します。
日本の詳細分析では顕微FT-IRを用い、より小さい粒径（≥20μm）まで評価している例もあります。
国内広域調査はろ過後にFT-IRで同定し、暴露評価まで行った点が特徴です。
| 研究例 | 検出サイズ | 主な識別法 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 国際ブランド横断 | ≥149μm | マイクロラマン | 0〜10個/kg、年最大37個摂取程度を推計 |
| 日本の3産地詳細 | ≥20μm | 顕微FT-IR | PP・PEを全サンプルで確認、粒径29〜459μm |
| 日本の市販食塩（広域） | （ろ過後評価） | FT-IR | 平均1.3個/kg、食塩由来は暴露全体でごく小 |
検出サイズの下限が小さいほど、一般にカウントは増えます。
同じ「個/kg」でも検出下限が違えば別物と考え、手法とセットで解釈しましょう。
サイズの違い
小さな粒ほど検出は難しく、方法ごとの差が最も表れやすいのが「下限サイズ」です。
数字を比較する際は、次のチェックを必ず行いましょう。
- 検出下限（例：≥20μm、≥149μmなど）が明示されているか。
- 樹脂種の同定に分光法（ラマン/FT-IR）を使っているか。
- 「個/kg」と「ppm」のような単位の取り違えがないか。
- パッケージやフィルター片など、プラスチック以外の粒子を排除しているか。
- ブランクや再現性の確認が記載されているか。
これらを満たすほど、結果の信頼性が高まります。
値の受け止め
日本の広域調査は、食塩由来の年間摂取が平均4.7個と、呼吸・室内ダスト・魚介類に比べ数百〜千倍以上小さいことを示しました。
塩単体で「ゼロ」に固執するより、生活全体の暴露を減らすアプローチが合理的です。
そのうえで、手法や検出限界を確認しながら、納得のいく商品を選ぶことが現実的な最適解になります。
青い海の塩の安全性をどう考えるか
ここからは、青い海の塩に関する公表情報を踏まえて、ユーザー側の確認ポイントを具体化します。
ブランドを名指しで断定するのではなく、公開情報に即して事実を整理し、実務的な判断材料を提示します。
公表情報
同社はISO22000の認証取得や品質保証部門の常設、工程管理の実施を公式サイトで明記しています。
また、2019年に生活クラブが依頼した外部分析では「不検出（検出限界1ppm）」が公表されています。
ただし、他研究は「≥20μm評価」や「≥149μm評価」など条件が異なるため、完全な横並び比較はできません。
最新の検査頻度や手法、検出限界の開示状況を確認し、情報更新に応じて判断するのが賢明です。
表示の見方
パッケージや公式サイトで確認できる表示項目の意味を整理しました。
| 表示項目 | 意味・確認ポイント |
|---|---|
| 原材料・採水地 | 「海水のみ」か、採水地点や取水方法の説明があると透明性が高い。 |
| 製法 | 平釜・天日などの製法記載。前処理（ろ過・沈殿）説明があると不純物管理の手掛かり。 |
| 品質管理 | ISO 22000などの認証や品質保証部門の有無、検査頻度・手法の開示が安心材料。 |
| 検査結果 | 第三者機関・検出限界・対象粒径（μm）の明記が比較の前提。 |
| ロット情報 | 製造所・ロットが追跡できると、万一の際の問い合わせがスムーズ。 |
これらを複合的に見て判断しましょう。
買い方のコツ
ラベルや公式サイトの情報は更新されるため、購入のたびに確認する姿勢が大切です。
次のポイントを押さえると、情報の非対称性をぐっと減らせます。
- メーカー公式ページで品質方針や認証の最新情報を確認する。
- 第三者検査の有無と検出限界・対象粒径の記載をチェックする。
- 用途に合わせ、少量で味が決まる塩を選び総使用量を抑える。
- 信頼できる販売者・共同購入体の発信も補助資料として参照する。
- 気になる場合は別銘柄や粒度違いをローテーションして使う。
同じブランドでも製品ごとに仕様が異なる場合があるため、商品単位での確認をおすすめします。
日々できるマイクロプラスチック対策の実践
塩選びと同時に、日常生活の暴露源を賢く減らすと全体最適になります。
研究では、室内ダストや呼吸、魚介類由来の寄与が相対的に大きいと示されています。
家でできること
最もコスパが高い対策は、暴露の寄与が大きい経路に効くものを優先することです。
以下の行動は、塩の銘柄選び以上に暴露総量を下げる助けになります。
- こまめな掃除と換気で室内ダストを減らす（掃除機の高性能フィルター活用）。
- 合成繊維の衣類は洗濯ネットや専用フィルターを併用し、繊維片の流出を抑える。
- 使い捨てプラスチックの使用を減らし、食品接触プラの過熱を避ける。
- 飲用水は必要に応じて信頼できる浄水で微粒子を低減する。
- 魚介類は産地や部位を見直し、多様なタンパク源でバランスを取る。
これらの対策は、室内ダスト由来の暴露が大きいという知見とも整合します。
食と調理の工夫
塩は適量使用が基本です。
酸味や香辛料、うま味を活かすと塩量を減らしても満足感が得られ、総摂取量のコントロールに繋がります。
また、加工品より素材調理を増やす、粉末スープや調味ミックスを必要分だけ作るなども、間接的に包装プラ接触機会を減らす助けになります。
環境アクション
個人の選択は小さく見えて、積み重ねると環境側の発生源を減らします。
身近な取り組みを、効果の方向性と一緒にまとめました。
| 行動 | 期待できる方向性 |
|---|---|
| リフィル・量り売りの活用 | 使い捨てプラ削減、海洋流出リスクの源流対策 |
| 分別と高リサイクル材の選択 | 環境中への散逸低減、資源循環の改善 |
| 地域の清掃・啓発活動 | 流域での散乱ごみ削減、意識改善の波及 |
小さな一歩でも、生活圏の海や川に届く効果があります。
青い海の塩とマイクロプラスチックの要点整理
日本の市販食塩のマイクロプラスチック濃度は国際比較で概ね低水準で、食塩由来の年間摂取は他経路に比べて小さいというのが現時点の知見です。
青い海の塩はISO22000や第三者検査といった取り組みが公表されており、選ぶ際は検出限界・対象粒径・手法の情報まで確認すると納得感が高まります。
数字は手法で動くことを前提に、塩選びと生活全体の暴露対策を組み合わせて、安心とおいしさのバランスをとっていきましょう。
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